松田卓也氏が副所長をしている基礎科学研究所では電流に関して以下のようなことをおっしゃっております。(当方は松田氏のことをこちらの本で知りました)
Q,電流の速さとはなにか?どのくらいの大きさか?
A,電子の速度はドリフト速度。しかし電流の速度は光速とするのが適切。
Q,電流のエネルギーはどこを通って運ばれるか?導線中か?空間か?
A,電流のエネルギーは空間を通って運ばれる。
Q,電流が流れている導線は中性か、帯電しているか?
A,帯電している。
松田氏は電流を水流モデルで考えることを否定なさってます。
トコロテン式と表現なさってますが、つまり導体内の自由電子をある種の気体のように考えてそれの疎密波が電流の速度だから音速が限界で実際の光の速度には遠く及ばない。では何が電流のエネルギーを運んでいるのかと言うと電線が帯電してその帯電部分から発生する電場と電流が流れるこ
とにより生ずる磁場とが直交する方向のポインティングベクトルによって伝わるのだそうです。
つまり負荷がたとえば白熱電球ならポインティングベクトルがフェラメントのタングステンに吸収されることによって熱が発生するのだそうです。
たしかに近接作用的に考えるとエネルギーは電線の外側を伝わっていき負荷はそのエネルギーを集めて熱などのエネルギーに変えていることになる。このような考え方は一見奇妙に見えるが電磁波現象まで含めた扱いをするときには詭弁的(?)だが有用であることは事実である。
しかし実際は大きな誤りである。
このポインティングベクトルはコンデンサの電極間に棒磁石を挟むだけで循環する形で発生するのである。つまり彼の理論が正しければそこに白熱電球を置くだけで電流が流れていないのに光りだすことになる。
電流のエネルギーは電源が作る電位差というポテンシャルエネルギーが伝導電子に運動エネルギーを与えそれが運んでいるのである。
イメージ的にはトコロテン式のように見えるがしかし伝播速度は音速ではない。
電子は9.11x10^-31kgと非常に軽いのである。
単純な計算で確かめてみると電界1V/mだとするとクーロン力
-eE=1.6x10^-19x1=1.6x10^-19N
による電子の加速度は
F/m=1.6x10^-19/9.11x10^-31=1.76x^11m/s^2
となる。つまり一秒後の速度は秒速1億7600万km。
もろちろんすぐに電線を構成する格子に衝突するためこの速度にはならないが途轍もない速度で電流という情報(?)が伝わっていることがお分かり頂けると思う。
ただし誤解がないように付け加えるが、たとえ格子がなくても相対論効果によって秒速30万km以上にはならないことは周知の通り。
まあ、ここでは電子が粒として電線の中を移動しているようなイメージで説明したが実際は波の形で伝わっており全ては干渉効果の現れである。
意外に思われるかも知れないがもし、電線を冷却して格子の振動を止めてしまうと電流は流れなくなる。
単純に考えると格子に入射する波と反射する波とが干渉すれば新たな電子波が発生しそれは格子を無視した流れとなりそうだが(電気抵抗が無いような感じ)しかし、実際は電子はエネルギーバンドを形成しているため振動するだけで流れないのである。
ややこしい話になってしまったが量子力学では常識です。
松田氏はこの自説を証明するためこの動画の実験をしておられるが、かなりピントがずれていると思う。半分正しいが半分間違いという感じ。
彼の説では直流電源でもポインティングベクトルによってエネルギーが運ばれそれが熱エネルギーなどに直接変わるということなのだから。